M.HASUIPhotographer

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切なさの地層 23:59


ブログというのはなかなか難しい。公開日記のようなものと考えれば、その日の出来事を綴ればいいのだが、僕のなんの出来事もない平凡な日常を書いたとしても、それを読んでいただいたとして何の意味があるのかと、考え始めればキーボードの上で手が動かなくなる。しかし、その平凡な日常の中にもどうしようもないような切ない出来事や情けないことが結構あり、おそらくそのようなことは皆さんにも同様にあるのだろうから、これを綴れば共感していただけるだろうと思うことが、実はたくさんある。しかしながら、それを正直に書くことがどうしても出来ない。それはそこだけはどんなことがあっても曝け出してはいけないのだと、自分の中からの声がストップをかけるからだ。
今日は以前撮ったポートレートのネガが必要になり、ネガをおいてある倉庫に探しに行った。そのネガは思ったとおりの所にきちんと収まってしまわれていたから、すぐに取り出すことが出来た。それをしまいつつふと横を見ると、そのネガファイルのそばに見慣れない分厚いファイルを見つけた。
何だろうと開くと、僕がかなり前に撮り散らかしてそのままになっていた普段のスナップ写真のネガを助手の高沢君が丁寧に整理してファイリングしてくれていたのである。
僕はその整理されたベタ焼きを一枚ずつ丁寧に見た。
ベタ焼きに並ぶ小さな1カット1カット、そこには懐かしい記憶や空気感、会話などが焼き込まれていて、見ている端から怒濤のようにそれらの記憶が逆流してきたのである。
僕は写真を見てセンチメンタルになることが、あまり好きではない。
だけど、そのときばかりは、どうしても我慢することは出来なかった。生きているということは切なさを地層のように積み重ねることなのかもしれない。そしてその中に埋まった記憶はやがて化石となり、それはいつの日か僕の作品として写真に姿を変えてよみがえるのかもしれない。
今日も耳鳴りがひどい。
庭でのスナップ。ライカM9、絞り優先オート、f8。
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写真的なこと 23:03


考えてみれば、いつもずっと同じ問答を繰り返している。

今日から始まったゼラチンシルバープリントセッション、あらためてゆっくりと見てきた。今回は代表作というテーマだ。もう亡くなられた植田正治さんの作品やアンセルアダムスのオリジナルから、若手の作品までが一同に展示されている。どれも代表作と言うだけあって素晴らしいものばかり。プリントは当時のものもあれば改めてプリントされたものもあるが、どれも素晴らしいファインプリントだ。

写真の衝動はどのようにしてやってくるのだろうか。テーマとは考えて思いつくものではなく、様々な出来事や巡り合わせから不思議な力によって紡ぎだされるように思う。

一人一人の作家に与えられたスペースは幅90センチの壁面だ。そこに展示される一点か二点の作品は、それだけを我が視界にとどめれば、その左右にその作家の空気が広がって、あたかもすべての空間はその作品の延長で飾られているかのように錯覚すらする。
何らかのプロセスによって、その作家の中に生まれ表現された一枚の作品は、それがたった一枚でもその空間をすべて塗りつぶすだけのパワーを持っている。

デジタルかフィルムか、カラーかモノクロか。そのようなことに縛られることなき写真的行為はこれからの僕のテーマである。
いつ終わるかも知れない人生だが、その翌日もあることを期待しつつ、できることをするしかない。考え続けることが大切である。今日はとくに耳鳴りがひどい。

重力に逆らう洗濯のハンガー。ライカX1、プログラムオート。
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リーフリードランダー展 00:42


先日、長應院というお寺のご住職が個人で開かれているギャラー「空蓮房」にリーフリードランダーを見に行ってきた。このギャラリーの主宰者であられるご住職はご幼少の頃から写真を撮っておられ、その後渡米されて宗教活動をされ、帰国されてからは写真を撮りながらも、多くの作家の写真をコレクションされている方である。フリードランダーを観賞後、少しのあいだだがお話を聞くことができた。じつは僕も以前このご住職に作品を買っていただいている。
「ここのギャラリーは小さいですが、無の空間で写真と一対一に対峙していただけるようにしてあります。そのような空間で改めて写真を見つめれば、また新しい会話が写真と始まります。」
確かに言われる通りである。今回の展示はセルフポートレートに花瓶の植物を撮ったスティルライフを組み合わせてそれを4組と、かの有名なショーウィンドウに映る自分を撮影したポートレートが一点というミニマムなキュレーションだったが、見事にやられてしまった。
写真はじっと時間をかけて見つめていると、いままで自分の中にあっても決して開けることのできなかった扉がすーっと静かに開く瞬間を味わうことがある。その扉の中へそっと足を踏み入れる。
無音のときもあれば、静かな音楽が流れてくるときもある。そして、そこにしっかりと実在する我が魂の存在を感じるのである。
帰るときに、「写真集を作ったので」とご自身が70年代に撮られた写真で編まれた写真集をいただいた。その写真集もまた実に生き生きとした時間のながれる秀作であった。
まさに写真はこちらと向こう側にかかる橋である。
部屋の観葉植物、シグマDP2、プログラムオート。
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長い撮影で 11:45


昨夜は内容の濃い撮影で、結局自宅に戻ったのは夜中の3時だったのでブログの更新をちょっとサボってしまった。すみません。
昨夜の撮影は地球環境を守るというある環境保全団体の仕事なので、クリエーティブはボランティアだったのだが、企画がなかなか優れていたので面白く撮影ができた。まだここで内容を書く訳には行かないのが歯がゆいが、割り切りのいい企画と映像のクオリティを優先させるところは海外のクライアントらしいものだった。もちろん特殊なマーケットで商品を売るための日本の広告とは違うのでやりやすいと言えばそれまでだが、伝えるというコミュニケーションの基本を知的にわかりやすくという意味である。
制作のスタッフはぼくがいつもお世話になっている気心の知れたスタッフだったので、尚いっそう楽しい仕事だった。編集の仕上がりが楽しみだ。
話しは変わるが、そんな長丁場のスタジオ撮影でいつも気になるのが、テーブルに置かれたスナック菓子である。コンビニやドンキーで買われるそれらのお菓子、だいたいその種類は決まっていて、小さく一個一個包装されたおかきとかチョコレート、キャンディー、グミ、プチケーキ、などなど。やはり撮影中はついつい手が出てしまう。でも考えてみればあまり動かずにスナック菓子ばかりつまむのは、余分な糖分や添加物など体にはまったくよろしくない。
そこで思うのだが、いっそそれらを一切やめて、ジャコや乾燥昆布、松の実やドライフルーツを買って来て、大きめのザルに入れて置いておくというのはどうだろうか。これなら、健康にもいいし、ついつい撮影に夢中で食べ損なうお弁当の代わりにもなる。
地球環境を考えるという仕事をしながら、人工的なスナック菓子をつまむという事にちょっと違和感を感じながらの深夜まで続く撮影だった。
昨日は久しぶりの好天で、スタジオに籠っているのが悔しかったが、そんな内容のいい撮影だったので救われた。
今回は予算が少なく、それでも企画の内容を見てご協力いただいた用賀10番スタジオの郷さん、また多くのスタッフの皆さんありがとうございました。お疲れさまでした。
ライカM9 ズミルクス50ミリ。
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不況を抜け出す力 22:56


だいたい一ヶ月間に何冊くらいの雑誌を買っていただろうか。こまめに記録はしていないが、ちょっと記憶を辿ってみよう。車雑誌はエンジン、モーターサイクリスト、モトナビ、写真雑誌は日本カメラ、フォトグラフィカ、ファッション誌はボーグジャパン、エッジ、ヒュージ、このほかにムック本と海外の雑誌が数冊。こうやって書いてみるとかなりの冊数を買っていたことになる。しかしこのところ書店に足を運んでも滅多に雑誌を買うことがない。その理由は、どの雑誌も内容がつまらなくなったから。特に日本の雑誌はどれも中身が似たり寄ったりで、新しい切り口で楽しませんてくれる本がほんとに減った。そして、廃刊、廃刊で急激にその数が減っている。まだ出たばかりというような雑誌がすぐに休刊になり、それはイコール廃刊を意味する。
そのような状況のなか、今年の二月に廃刊した雑誌が、今月復活した。毎号買っていたオートバイ雑誌のモトナビである。二玄社が出していた今は無きクルマ雑誌のナビの姉妹誌として出ていた本だが、ナビの廃刊とともに休刊となった。そのモトナビが今月創刊したのである。創刊ということは、出版社が変わったということを意味する。今月号の巻頭の言葉にあるが、モトナビの編集者と編集部員は新たに新会社を立ち上げ、そこからの新刊に成功した。雑誌を作ることに情熱を持つ人によって、大手ができないことを小さな会社でやり遂げたのである。
これはなんだかうれしい出来事だ。雑誌に限らずこれからの時代はこういう人たちが支える時代のように思える。情熱のある人たちが、大きな利益を追わず、小さな組織でより個性的なことを始める。
モトナビ今月号は、まだ旧モトナビの編集内容を引きずってはいるが、これからはもっと個性的で奥の深い内容で楽しませてほしい。雑誌の内容が面白くなれば、定期購読層も増えて、広告の出稿が増える。それは僕らの仕事にも影響してくる。
この不況といわれる時代を抜け出す力は、小さくても強い力、情熱だ。ぼくも一層写真に情熱を持たなければ。
ライカX1、絞り優先オート、F8.

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